子どもにとっては、「自分一人でできること」と「誰かのサポートがあったらできること」と「まだ全然できないこと」があります。
このうちの「誰かのサポートがあったらできること」を、発達の最近接領域と言います。
乳幼児さんたちにとっての ”誰かのサポート”と言うのは、
・技術的なこと(体の使い方や手順をサポート)
・思考的なこと(言葉を補ったり提案してあげるサポート)
・心理的なこと(そばにいて安心感を与えるサポート)
の3つに大きく分けて考えられると思います。
Music Togetherでもレッスンの様々な場面において、子どもたちそれぞれの最近接領域と、それに対しての大人の関わりが見られます。
例えば、技術的な面では、
・楽器を箱に返すとき、「手を広げる」がまだできない赤ちゃんは、大人が赤ちゃんの指をやさしく開いてあげることで赤ちゃんの手が開き、楽器を手から離すことができます。
思考的な面では、
・ネコのまねをしたい子は、大人が「なんて鳴くかな?」と質問してあげると、「ニャーニャー」と答えることができたり、「こんなふうに動くよね?」とこぶしをクルクルする動作を示すと、ネコの動作への想像が働いてまねっこ遊びができるようになります。
また、心理的な面では、
・先生にスタンプをもらいに行くのに、ママの手を引っ張って一緒についてきてもらうことで、先生のところまで行ける子もいます。
楽器を使う場面では、トライアングルをお子さんの見えるところでたたいてお手本を見せてあげます。
以上はクラスでよく見られ、また大人の関わりも ”子どものちょっと” と同じ ”ちょっと” のサポートであると言えるんです。
Music Together に来る大人たちは、子どもと同じ”ちょっと”を探すのがうまくなっていきます。
その理由は、子どものしていることの観察が上手になっていくからなんですよね。
子どもの今を分かち合うことができて、共有する力をつけていきます。
先ほどの例で言うと、
・赤ちゃんの指を広げてあげる→赤ちゃんの手から楽器をはずしてしまう。
・ネコちゃんの動作を考えられるような言葉がけ→「ネコちゃんはニャーニャーって鳴くんだよ」「こうやって動くんだよ」と教え込む。
・先生のところまで手を繋いで一緒に行く→自分で行ってきなさいと促す。
楽器を使う場面では、トライアングルをお子さんの手に握らせて、その手を大人が取ってたたかせる。
このようにしている方も多いのではないかな、と思います。
ですが、”もっと” を求めるやり方の良くないところは、大人側の都合に沿って、大人側の視点に立っていること。大人が子どもを操作しているようなものです。
大人が ”もっと” 物事を早く進めたいから、”もっと” 言葉が使える子になってほしいから、”もっと” 自立した子になってほしいから…
”もっと” できるようになってほしいと言う願いが、大人をそうさせている気がします。
ところが、成功体験が多く、好奇心があり、モチベーションが高く、問題解決力があり・・・と言うような力は、”ちょっと” のサポートを受けた子の方に育ちやすいと言うことがわかっています。
あと ”ちょっと” のところにちょうど良い足場をかけてもらい、安心安全な足場の上で自分で挑戦してみること。成功したときの達成感や喜びの感情は、「できた!」「こうやればいいんだ!」「またやってみたい!」に繋がって、子どもが自分でドアを開けることをサポートするんですね。
自分たちでやってしまった方が 、その時だけは”もっと” な理想の形ができあがりますが、残念ながらその次から自動化されるわけではないんです。「何回も教えてるのに、この子はできない」と言う心配や不満を生んでしまうことも。
タイムパフォーマンスが良いようでいて実は悪い。
結局は「急がば回れ」ということになります。
それと、大人だって、子どもたちのドアを閉めたままにしたいわけではないんだと思います。
本当は、子どもが自ら目の前のドアを開けて進んでいってくれることを期待しているのに、大人と子どもの関係の外にあるものが邪魔をするんだと思うのですが、それはまた別の機会に書きますね。
Music Togetherの大人たちは、”Resist the Urge” と言う言葉を大切にしています。
これは、「大人の衝動を抑えて子どもを観察し理解する」と言う意味。
子どもの今を理解し、受け止めながら、子どもにあった ”ちょっと” の具合を知っていきたいですね。
そして、子どもたちがハッピーに進んでいけるような関わり方を身に着けていきましょう。
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